2024年8月26日
セレクトセール2024が終了して
7月8日、9日の2日間にわたって開催されたセレクトセール2024は、驚くばかりの数字を残して無事終了した。2日間の総計で472頭が上場され、落札頭数が455頭、落札総額は289億1800万円(税別、以下同)、平均価格は6356万円、落札率は96.4%、1億円以上の高額落札馬は64頭に達した。
セール取引馬のダノンデサイルが日本ダービーに優勝し、フォーエバーヤングはケンタッキーダービーで僅差の3着に入るなど、国内外を問わず活躍する取引馬が続々と誕生したことが購買者の信頼を一段と高めた。初日、2日目ともに熱気に満ち溢れた競り合いが最終盤まで展開され、昨年を7億7300万円上回る落札総額、96.4%の落札率はいずれも過去最高の記録となった。いったいこのセールはどこまで成長を続けるのだろうか。
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今回、私はある馬主様の所有馬の販売申し込みのお手伝いをした。昨年から当協会の申し込みは、ネット申請で完結できるようになった。実際に当事者としてネット申請をしてみると、簡単便利の一言に尽きる。多頭数申請の販売申込者であれば、どれだけの紙と時間の短縮になるだろうか。自画自賛で恐縮だが、SDGsを推し進める当協会の取り組みの一つとして非常に有効に機能していることを、身をもって実感した。
さてその販売申し込みをした馬は、晴れて初日のセールに上場が決まった。そのセールの当日、上場した馬主様の代理人である育成牧場に、購買者から上部気道のスコープ検査を実施してほしいという連絡が入った。レポジトリーの映像上では気道に付着物らしいものが写っており、もう一度実際の状況を確認したいと言う。依頼を受けた育成牧場も直ちに獣医師を手配し、その場で鼻腔からスコープを入れて気道の状態を購買者に見てもらい、異常がないことを示したということだった。依頼主は外国人購買者であったとのことで、彼らの徹底した事前リサーチにセリに臨む本気度を感じた。
そしてこの上場馬は、その外国人購買者に無事落札された。購入したのは米国人馬主のRepole Stable Inc.(以下、リポールステーブル)。今回のセールではこの馬を含む7頭の馬を総額4億2700万円で落札した。代表であるマイク・リポール氏は、飲料会社の経営者として成功を収め、会社株式をコカ・コーラ社に売却するなどして財を成した。その後リポールステーブルを開業し、競馬にも本格的に参入。種牡馬としても成功を収めているBCジュヴェナイル勝ち馬アンクルモーや、昨年のBCジュヴェナイル勝ち馬フィアースネスなど数々の活躍馬のオーナーとして知られる。
5月の千葉サラブレッドセールでも2歳馬を1頭、購買していたが、それに続く日本のセリでの競走馬購買。セレクトセールでは1歳馬5頭、当歳馬2頭を購入したが、ブラックタイプのしっかりした牝系に、コントレイルやキズナ、ロードカナロアやドレフォンなど成功要素の詰まった種牡馬を配して誕生した産駒を4000万円~8000万円といったスマートな価格帯で購入していたのが印象に残る。
リポールステーブルは、今回の日本での購入をSNSで逐次発信していた。以下はその抄訳である。
「JRHAセールへの初参加に、私もチームも本当に感動しセリを楽しんでいます。彼らのオープンで透明性の高い取り組み(医療記録や公表されたリザーブ価格)は、効率的で新鮮です。販売会社がサンタクロースやイースターバニー(復活祭のウサギ。子供たちに贈り物を届ける)から架空の入札を受けてリザーブに到達させる米国とは異なり……(笑)」
はからずもその場でスコープを入れて確認できたことが、今回のセレクトセールの好評価につながったようだ。また、リザーブ価格からスタートするセリのスタイルが、透明性と信頼性において諸外国との違いを際立たせることにつながっていたようで、米国の購買者からセレクトセールの運営姿勢に高い評価をいただいたことを大変嬉しく感じた。
「JRHAの皆さん、素晴らしい運営とホスピタリティに感謝します。初めてのセレクトセールで私たちは素晴らしい体験をしました!」
また別の媒体では代表のリポール氏が「日本で馬主としてレースをするためのライセンスを取得したいと思っている」と述べ、購入馬を米国だけでなく日本でも走らせたいという明確な意思を表明した。この後、リポールステーブルはHBAのセレクションセールでも2頭の1歳馬を6800万円で落札した。
今回のセレクトセールで、海外の購買者が落札した頭数は12頭。2017年(同じく12頭)以来、久々に2桁の数字となった。円安もあり、日本馬を購入しやすい環境にはあったが、ウシュバテソーロやフォーエバーヤングといった日本産馬や、オーギュストロダンのような外国産の日本の種牡馬の産駒が世界各地で活躍していることが、外国人購買者のセリ参入への大きな動機付けになっていることは間違いない。今回お手伝いした馬も米国に渡ることが決定している。セレクトセール出身馬の海外での活躍を心から祈るとともに、セール出身馬の海外での成功により、より多くの外国人購買者のセリ参加を促すことにつながればと心から思う。