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2008年6月1日

豪イースターセール

盛況セールが好調な理由

北海道事務所・遠藤 幹

 4月18日から25日にかけて、 オーストラリアのシドニーで開催されたウイリアム・イングリス・アンド・サン社 (イングリス社) のイースターセールを視察した。 イングリス社は年間6000頭以上のサラブレッドを取り扱う南半球最大のセリ会社で、 毎年イースター (復活祭) に開催される 「オーストラリアン・イースターセール」 は南半球最大のセールとして有名だ。
 3日間開催された 「イヤリングセール パート1 (セレクトセール)」 は過去最高の売却成績を記録した。 450頭の上場で383頭を売却し、 売却率は85%、 売却総額は1億4382万ドルで、 平均価格は37万5000ドルを超えて中間値も25万ドルと、 いずれも昨年の記録を更新した。 この6年間の売り上げの推移を見れば、 平均価格、 売却総額とも2・6倍と急上昇しており、 100万ドル以上で取引された上場馬も今年は28頭を数えた。 オーストラリア国内の経済が好調で国外からの投資も呼び込み、 セール自体も開放的なことが、 この好成績に如実に現れているのだろう。
●セリと競馬のコラボ
 4月のセリ開催に合わせて、 「秋の競馬祭り (2008オータム・レーシング・カーニヴァル)」 と銘打った競馬シリーズも開催されていた。 イースターセール前日の4月19日にはローズヒル競馬場で 「ゴールデンスリッパーデイ」 (世界最高賞金の2歳戦)、 セリの中日にあたる4月26日にはランドウィック競馬場で 「AJCダービー&ドンカスターHデイ」 を開催して、 競馬事業と生産事業のタイアップを見事なまでに図っていた。
 大レースには馬主、 調教師、 生産者など各国の競馬関係者が結集するので競馬ビジネスには格好の場となる。 そして、 直後に最上級馬が集結するセレクトセールの開催となれば、 関係者はそのままシドニーに滞在してセリに参加することになる。
 セレクトセール初日の4月20日は午後3時にセリが開始された。 通常は競馬開催日の夜にセリが行われるナイトセッションがあり、 正装した馬主や着飾った女性が来場して大変華やかなセリになるという。
 今年は馬インフルエンザの影響でセリの日程が10日ほど遅れて競馬開催日とずれたため、 例年と比較すると雰囲気は異なっていたようだ。 それでもセリ会場に隣接したスタンドバーには長蛇の列ができ、 飲みながら、 会話を楽しみながらのセリとなり、 観光客も多数入り込んでの 「夜のお祭り」 となっていた。
 オーストラリアの国民性もあるのだろうが、 「セリは楽しく、 華やかに」 といった感じで、 とにかくワイワイ楽しもうというスタンスは大変好ましく思えた。 そして、 この雰囲気づくりがセリの売り上げにも好影響を与えているものと思われる。
●オンラインビット
 イングリス社は、 インターネットでセリに参加できるシステムを独自に構築し、 3月のイヤリングセールから運用を開始している。 事前登録すればパソコン画面からセリに参加でき、 イースターセール初日には30名ほどのログインがあったという。 ネット特有のタイムラグも少なく、 香港の購買者が60万ドルで落札した実績を残したそうだ。
 5月末現在、 イングリス社のセールに上場された1歳馬、 当歳馬、 繁殖牝馬、 現役競走馬、 約3500頭のうち305頭に対してネットでのビットがあり、 77頭がネット参加者に落札されている。 その半数に迫る34頭が繁殖牝馬というのは、 血統や受胎種牡馬を元に取り引きされる繁殖牝馬がオンラインビットになじみやすいからだろう。 遠隔地からセリに参加できるこのシステムは購買者の利便性を高める方法として注目できるものだ。
●セリ成功の秘訣
 イングリス社ではレポジトリーのIT化にも着手した。 今年3月からネット上でレポジトリー資料を公開し、 事前に登録した獣医師なら、 レポジトリー施設に赴かずに画像確認ができるようになった。 また、 セリ会場に隣接したレストランのテラスを拡張して、 食事を楽しみながらセールに参加できる観覧席を整備する計画もあるという。
 IT化もテラスの改修も、 セールに訪れた購買者の利便性を高め、 気持ちよくセリに参加してもらうための仕掛けづくりだが、 良質馬をセレクトして上場し、 何の制約もないオープンなセリを開催することが大前提であることは、 オーストラリアでも日本でも変わりはない。 また、 所定のセリ手数料 (イングリス社では売却価格15万ドルまでは売却代金の8%、 それ以上は6・5%) を徴収することも、 セリの運営をより良いものにするためには不可欠だろう。 その認識を強くした今回の視察研修だった。 (注:ドルはすべて豪ドル・1豪ドル=101円)

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