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2026年2月25日

退厩した種牡馬の将来を考えて

北海道事務所・遠藤 幹

 この文章を書いているのは1月下旬である。私の勤務先であるブリーダーズ・スタリオン・ステーションには、3頭の新種牡馬(ソウルラッシュ、ソールオリエンス、プログノーシス)が入厩した。これら新種牡馬を管理する牧場としてこの時期の最優先事項は、試験種付けを成功させ「種畜検査」に合格させることである。幸いにして3頭とも試験牝馬にすんなりマウントしてフィニッシュし、たくさんの活力ある精子を確認することができた。あとは2月上旬のシーズンインまで体力と英気を養う日々が続く。
 これら3頭の新種牡馬を受け入れた裏返しとして、昨年3頭の種牡馬が退厩した。私どもの施設には馬房数が20強しかないので、種牡馬の退厩は、産駒の成績や種付数の変動を確認しながら丁寧に進める必要がある。シンジケート種牡馬については、当然ながら会員のシンジケート解散決議(総口数の3分の2以上の同意)が必要となる。
 ここからは、昨年退厩した種牡馬3頭(サトノアラジン、シュヴァルグラン、アルアイン)にスポットを当ててみたい。
 サトノアラジンは、長年ニュージーランドのリッチヒルスタッドとの間をシャトルスタリオンとして行き来していたが、日本での種付数が減少する中、昨年夏のニュージーランドへの旅立ちで、ほぼ帰国する見込みはなくなった。本馬の産駒成績だが、南半球の競馬と大変に相性が良く、かの地でGⅠを2勝のペニーウェカを始め、数多くの重賞勝ち馬を輩出しているのだ。日本のシンジケート所有のままでの貸し出しだが、種付料は円換算で400万円にもなる。昨年4月末にリッチヒルスタッドのトンプソン副社長が来日し、サトノアラジンと対面したが、本当に嬉しそうにアラジンに話しかけていたのが印象的だった。2025/26年シーズンは、種付数も100頭近くに達したとのことで、現地での人気も上々のようだ。
 シュヴァルグランは、ノーザンファームの吉田俊介副代表にお骨折りいただき、ノーザンホースパークへ移動した。昨年夏のことだが、ブリーダーズ・スタリオン・ステーションの一般ファンの見学において、1番人気は本馬だった! 私は全く知らなかったのだが、「ウマ娘」のキャラクターで「シュヴァルグランちゃん」が登場していたらしい。中国本土から来た若い男性が、翻訳アプリを操りながら、「シュヴァルグランはどこですか?」と、その場に居合わせた私に聞いてきたことがあった。彼のショルダーバッグは50を超えるシュヴァルグランちゃんの缶バッジで埋め尽くされていて、事情を知らない私は、度肝を抜かれてしまった。今年の春には、シュヴァルグランは、香港の英雄ゴールデンシックスティや有馬記念馬ブラストワンピースらとともに、ノーザンホースパーク内で人気を集めるのではないだろうか。
 アルアインのシンジケート解散には、明確に反対の意思表示をされた会員の方が複数いらっしゃった。そのうちのお一人は以前から顔なじみの馬主様で、「僕のアルアインの子はどれも成績がいいんですよ。解散はもったいないから、ぜひ来年も管理して欲しい」と懇願された。25年の種付数は23頭。一度大きく種付数が減少すると正直、復活することは難しい。まだデビュー前の産駒も数多いのだが、一方で種牡馬の流行り廃りも本当に激しい。種付数が減少した結果、シンジケートの運営には負担金(年間経費を会員数で割った飼養管理費)が生じてしまい、また生産地では、新種牡馬に目が行きがちで既存の種牡馬が軽視されてしまう傾向も強い。馬主の方々は本馬の将来性に期待しシンジケートに加入しているので、この時点での解散話には、おそらくある種の唐突感と拙速さを感じていらっしゃるようにも思う。私自身も、秋口までアルアインの産駒成績を注視していたが、最終的には関係者に相談の上、事務局として解散アンケートに踏み切った。その結果、解散賛成が大多数を占めて本馬はスタリオンを退厩。本馬は会員のお一人にお譲りすることとなった。
 種牡馬を退厩させる際、肝に銘じていることがひとつある。譲渡に際しては、可能な限り面倒を見ていただける信頼できる方にお願いしている。遠い昔のことだが苦い思い出がある。ある種牡馬の退厩先として、この種牡馬を自家用種牡馬として繋養したいという牧場にお譲りしたところ、翌年この馬はこの世にいなかった。当方の思いを100%引き継いでいただくことは無理ではあるが、可能な限り種牡馬の尊厳を守り大事にしてくれる引き取り先を探すのも、事務局の大事な仕事ではないかと思う。
 さて、アルアインだが……昨年の12月13日に退厩した。その約2週間後の28日は有馬記念。アルアインの代表産駒コスモキュランダが12番人気で出走した。レースでは、そのコスモキュランダが、横山武史騎手の巧みな手綱さばきで3番手から直線先頭に立った。そのまま逃げ込みを図り、直線半ばではセーフティリードを取ったかに見え、私は声を失った。そこへ外からミュージアムマイルがすごい足で追い込んできて、ゴール直前にコスモキュランダを差し切った! アルアインに種牡馬としての意地を見せつけられた気がして、心の中で私はアルアインに詫びたのだった。
 退厩したアルアインは、受胎50万円の設定で、白馬牧場での供用が決定した。デビュー前の産駒も相当数いる本馬なので、今後も産駒の活躍から目を離せないことになるかもしれない。

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