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日高便り

2024年6月25日

平穏な生産地の中にあって

北海道事務所・遠藤 幹

 春競馬のクライマックス「日本ダービー」も終わり、何やら祭りの後の寂しさを感じる。馬産地では出産シーズンも終了し、種付期間も残り1カ月余り。間もなくJRAのローカル開催も始まる。早くも年の半分が終了し、産地はいたって平穏に時が流れているように感じる。
 先日、地元の方々と世代や業種を越え、野外バーベキューを楽しむ機会があった。地域人口が大きく減少し景気回復の実感が乏しい中で、参加された方々の話題は、家業や勤務先の先行きや、先々の医療費や介護費用の負担増への不安など、自然と身につまされる話も多くなる。幸いにして軽種馬産業はこの10年近く景気の良い状態が続く。競馬主催者の馬券売り上げも大きく伸び、旺盛な馬主層の購買意欲に支えられてセリの売り上げもまさに絶好調である。そんなことを頭の中でめぐらせながら、参加者の皆さんの話を聞いていると、そんな私を見透かしたように尋ねてくる方がいた。
 「遠藤さんの(軽種馬)業界は、景気はいいんだろうけど、どうして馬屋さんは地域の集まりに無関心なんだろう?」
 「週末に競馬があるし、生き物を扱う仕事で何かと牧場を留守にできないですから、みんながみんな地域の活動に熱心ではないかもしれないですね」と当たり障りなく答える自分ではあったが、さらにこの方の話は続いた。
 「馬屋さんは同業同士で集まり、地域農協より専門農協(日高軽種馬農協)を大事にしているけど、もう少し地元に溶け込んで力を発揮してほしいよ」
 お酒が入っていることもあり、やや険を帯び始めた話しぶりに、私は少し距離を取り始めたが、言わんとしていることも少しは理解できる。他の畜産業や農業とは違い、競走馬は高価でぜいたくな商品といえるだろう。牧場がお付き合いするのはその商品を購入していただける馬主を始め、関係する調教師などであり、地域や地場に根差した他の産業とは立ち位置が異なってくる。バブル経済崩壊後、競馬産業は大きく地盤沈下した時期もあったのだが、ここしばらくの好況は地域の活力低下とは反比例しており、そこをやっかみ半分で批判された格好となった。
 「地元農協は馬屋さんに貸したお金の回収に四苦八苦して、新冠から東の農協は信連(※)の管理下に置かれて大変なんだよね」と彼は続ける。
 農協の信用事業は、農家経営に不可欠で、当座の必要な資金を融通したり、設備投資のための長期貸付を行ったり、農業経営における血液ともいうべき重要な役割を担っている。しかし、かつて地元農協は過大な融資を繰り返した時期があり、その返済が滞った貸出先の大きな部分を軽種馬農家が占めていた。農協の自己資本比率が低下し、不良債権比率が大きく上昇した中で、4年前に信連は、日高地域の3農協から信用事業の譲渡を受け、各農家への融資債権を直接管理し貸出金の回収に力を入れている。ここ最近の軽種馬産業の好況で、あまりこの農協問題がクローズアップされることはなくなったが、他の農業者から見れば軽種馬産業への過剰融資のつけを払わせられている感覚になるのかもしれない。かなり乱暴な物言いで言われてしまったが、排他的な軽種馬産業界に対しモノ申したい気分になったのだろう。
 「確かにそういう面がゼロではないでしょうけど、その一方でそれら大変な時期に補助金に頼ることなく経営を立て直し、さらには経営を拡大し成功している軽種馬農家はたくさんいます。バブル不況やリーマンショックを乗り越えた現経営者の皆さんは、あなたが指摘するような軽種馬農家ではないと思いますよ!」と言葉が出かかったが、親睦の場をつまらなくするだけなので、これ以上の発言は慎んだ。
 幾歳月を経て、今は好況に沸く軽種馬産業だが、少し気になる兆候もある。本年のホッカイドウ競馬は16日間の開催を終えたところだが、ここまでの発売額は94億6220万円と、昨年同時期の106億4375万円より10億2000万円近く減少(前年比11.1%減)しているのだ。これはホッカイドウ競馬に限ったことではなく、南関東や高知でも同様の傾向が見られるらしい。
 コロナの巣ごもり需要で大きく伸びた地方競馬の馬券売り上げも、さすがに今年は一つの曲がり角に差し掛かっているのだろうか。減少の大きな要因は今のところ不明。私が定点観測している地元・門別競馬場は若いファンの来場が目に付き、とても楽しい雰囲気を醸し出している。だからこそなおさら売り上げのピークアウトは大変不思議な気がするのだ。単に一過性なのか、はたまた景気減速のシグナルなのか……。先に行われたトレーニングセールも好調に推移しているだけに、何やら腑に落ちない気がするのだが。
▼日高便り・脚注
※信連:北海道信用農業組合連合会の略。道内の農協の信用事業を統括する道域農協系金融機関。

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