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馬産地往来

2020年2月25日

新時代を支える種牡馬

後藤 正俊

 2019年日本競馬の各種成績がまとめられた。生産界にとって最も興味深いのは、やはりリーディングサイアー関連だろう。19年にはディープインパクト、キングカメハメハという生産界を支えてきた2大種牡馬が死亡したことで、令和の新時代を支える種牡馬はどの馬になるのか、生産者は慎重に見極めようとしている。
 現時点で後継としてトップに君臨しているのがロードカナロアであることは誰もが認めるところだ。アーモンドアイやサートゥルナーリアなど次々に傑出馬を輩出し、19年JRAサイアーランキングはディープインパクト、ハーツクライに続く3位。2世代だけだった18年の7位から大きく順位を上げた。サンデーサイレンスの血を持たないことから、父キングカメハメハに集まっていたサンデーサイレンス系の優秀な繁殖牝馬も、さらにロードカナロアに集中することが予想される。
 だが一方で、サンデーサイレンスやディープインパクトが登場した時のインパクトの大きさに比べると、まだ物足りなさも感じる。初年度(17年)のJRA2歳サイアーランキングでは産駒30頭が37勝で、2位ながらサンデーサイレンスの初年度(20頭が30勝)を上回り、ディープインパクトの初年度(34頭が41勝)に迫る成績を残した。18年2歳も33頭が40勝で2位の好成績だったが、19年2歳は6位(20頭が24勝)に下がってしまった。種牡馬入り3年目というのは1~2年目ほどの新鮮さがなくなり、また初年度産駒もまだデビューしていないため良質交配牝馬を集めるのが難しい年であることは確かだが、アーニングインデックスは全般1.23、重賞0.19と目立たず、急ブレーキ感は否めない。20年も1月末現在で総合7位と出遅れている。
 新種牡馬では、2歳リーディングでキズナが3位(27頭が33勝)、エピファネイアが5位(30頭が31勝)と健闘した。キズナ、エピファネイアはもちろん期待の新種牡馬であり、現役時代は2歳時から活躍したが、キズナはフランス遠征でのニエル賞制覇、凱旋門賞4着の印象が強かったし、エピファネイアは菊花賞馬であり、ともに産駒は晩成型になるのではないかという予想があった。それだけに2歳時からの活躍は期待がさらに膨らむものとなった。年明けも京成杯でキズナ産駒クリスタルブラックが1着、エピファネイア産駒スカイグルーヴが2着と高い素質を見せた。だがこちらも、2歳アーニングインデックスがキズナは1.44、エピファネイアは1・30で、ハーツクライの3.04、ディープインパクトの2・70と比べると見劣りする。「次世代エース種牡馬」争いはまだ混とんとしているようだ。
 その中で「次世代」とは呼べない年齢(19歳)ではあるものの、ハーツクライのここに来てのブレークぶりには目を見張るものがある。リスグラシュー、スワーヴリチャードの活躍も見事なものだったが、2歳はサリオス、ウーマンズハート、マイラプソディと3頭が重賞4勝。リーディングは総合、2歳ともディープインパクトに次ぐ2位となった。総合リーディングは20年1月末でも2位をキープしており、フェアリーSでチェーンオブラブ、ポレンティアが2、3着と明け3歳世代は依然として好調。古馬の2大看板が引退したとはいえ、今年もリーディング2位争いの筆頭であることは間違いなさそうだ。
 ハーツクライは現役時代、4歳末の有馬記念でディープインパクトを破るアップセットでG1初制覇。5歳になってドバイシーマクラシックを4馬身1/4差の圧勝。続くキングジョージ6世&クイーンエリザベスSも勝ったハリケーンランから約1馬身差の3着と活躍したことから晩成型と言われた。種牡馬としては安定感にはやや欠けるものの、海外G1をリスグラシュー(コックスプレート)やヨシダ(ウッドワードSなど)などが制し、14年はオークス、ダービーのW制覇など個性的な活躍を見せている。
 ハーツクライ産駒の20年3歳世代は、これまでに名前を挙げてきた馬以外にも素質馬が目白押しなのだが、さらに2歳世代は19年セレクトセール1歳で最高価格2億7000万円など2億円以上が2頭、平均価格が6467万円、1歳世代もセレクトセール当歳で1億6000万円が2頭いるなど、ここに来て評価が高まってきている。個人的な感想としても、昨年のセレクトセールを取材していて「良い馬だな」と感じたのはハーツクライ産駒が多かった。初期の産駒は母の父トニービン譲りのやや背の長い、見た目があまり良くない産駒が目立ったものだったが、交配牝馬の変化などもあって産駒の印象が変わりつつあるように思える。遺伝学的な根拠は薄いが、種牡馬としても晩成型なのかもしれない。
 ノーザンテースト時代からサンデーサイレンス時代の間をリアルシャダイ、トニービンが繋いだように、キングカメハメハ、ディープインパクトから新時代の間を、ハーツクライが繋ぐ役割を果たしていくのではないかと期待している。



2020年の馬産地往来



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