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馬産地往来

2020年6月25日

ディープインパクト最良の後継が誕生か

後藤 正俊

 いま生産界で最も注目されているのが、昨年7月に死亡したディープインパクトの“跡目争い”だろう。種牡馬としてライバルだったキングカメハメハは、すでにロードカナロアという最良後継種牡馬が登場している。アーモンドアイ、サートゥルナーリアなどを輩出し、昨年は総合リーディングサイアーでディープインパクト、ハーツクライに続く3位。今年は5月末時点でディープインパクトに続く2位で、近い将来のリーディング王者が完全に視野に入ってきた。種付料は500万円からスタートし、今春は2000万円まで上がっている。キングカメハメハ種牡馬は他にも、ルーラーシップが昨年の総合リーディング6位で、種付料は600万円。今年から産駒がデビューするドゥラメンテは初年度191頭、2年目203頭の産駒が誕生する人気の高さで、種付料は700万円。今春種牡馬入りしたレイデオロも初年度種付料が600万円に設定される評価の高さとなっており、後継候補は後を絶たない。
 一方でディープインパクト産駒の種牡馬は、初年度産駒(2008年生まれ)のトーセンラー、リアルインパクト、2年目産駒のディープブリランテ、スピルバーグ、トーセンホマレボシ、3年目産駒のキズナなどが産駒をデビューさせている。キズナは今年3歳の初年度産駒からディープボンド、マルターズディオサなど5月末時点で5頭のJRA重賞勝ち馬を出し、1世代だけで今年の総合リーディング13位と健闘。種付料も今春は600万円まで上がっているが、同期のエピファネイア(リーディング14位、父シンボリクリスエス)が二冠牝馬デアリングタクトを出しているのと比べても、ややインパクト不足の感が否めない。
 父系別種付頭数は、18年はキングカメハメハ系1653頭、ディープインパクト系1277頭だったものが、19年はディープインパクト系(登録種牡馬23頭)1690頭、キングカメハメハ系(同16頭)1565頭と、系統別種付頭数では逆転したものの、種付頭数が多いのはキズナを除くとリアルスティール177頭、シルバーステート157頭と比較的種付料の低い種牡馬である。父の競走成績、種牡馬成績があまりにも鮮烈だったため、その比較からどうしても物足りなさを感じてしまう。
 だが思い返してみれば、サンデーサイレンスが死亡したのは02年8月。誰もが認めるその代表産駒であり、最良後継種牡馬となったディープインパクトが生まれたのは同年3月のことだったし、そのディープに続く種牡馬成績を残しているダイワメジャー、ハーツクライも01年生まれで、父が死亡した時にはまだ競走デビュー前だった。初年度産駒(1992年生まれ)のフジキセキも着実な成績を残していたが、引退後は全盛期の父と同じ社台スタリオンステーションで供用されたこともあり、交配牝馬のレベルで不利な面があった。ステイゴールドは94年生まれだったが、同馬はブリーダーズ・スタリオン・ステーションで供用され、社台グループにとっての後継とは言えなかった。偉大な父親の死後に最良後継種牡馬が登場することは、市場原理の観点からも理にかなっているのかもしれない。
 そのタイミングで、コントレイルが登場した。5月31日の日本ダービーで2着サリオスに3馬身差の圧勝。これで皐月賞に続く二冠達成で5戦5勝。無敗の二冠達成は父ディープインパクト以来15年ぶり7頭目。偉大な父と比較できる可能性を持つ名馬が誕生した。ディープインパクト産駒は日本ダービー3連覇で、これはシアンモア、サンデーサイレンスに続く史上最多タイ。日本ダービー6勝目もトウルヌソル、サンデーサイレンスに続く史上最多タイで、父を歴史的大種牡馬へと導く日本ダービー制覇でもあった。
 これまでのディープインパクト産駒の活躍牡馬は、サトノダイヤモンド、マカヒキ、キズナなど、父とは異なり重厚さを感じさせる馬が多かった。だがコントレイルは450~60キロの馬体重より軽さ、薄さを感じさせており、父に最も近いタイプに見える。父は430~40キロ台の小柄な馬体から牧場での育成は最も遅れていたグループだったが、トレセンに入厩するとすぐに仕上がり2歳12月に衝撃のデビューを遂げた。コントレイルも育成牧場時代は体質が弱く、調教を休む日も多くあったが、やはり入厩後はすぐに仕上がり、2歳9月にデビュー勝ちを果たした。強烈な末脚、運動神経の良さなど父と共通点が多いように思える。
 競馬ファンはコントレイルの限りない未来に想像を膨らませていることだと思う。無敗での三冠達成はもちろん、父が叶えられなかった凱旋門賞制覇の夢の続きを見せてもらいたいと思っていることだろう。だが馬産地の立場からすれば、一刻も早く無事に種牡馬入りして、父の最良後継種牡馬としての道を歩んでもらいたいと願っている。



2020年の馬産地往来



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