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馬産地往来

2025年10月24日

「昭和100年」を機に

後藤 正俊

 昭和は1926年12月25日に始まった。この改元を基準とすれば2025年が昭和100年にあたるが、昭和元年が7日間しかなかったこともあってか、満100年を迎える26年に、政府として昭和100年関連施策を推進していくという。内閣官房でも「昭和100年ポータルサイト」を設置。政府主催の記念式典の開催を予定しているほか、昭和の文化(歌謡、マンガ・アニメ、映画、出版など)に関連したイベント開催が検討されている。
 JRA発行の雑誌『優駿』では、24年9月号で「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」、25年9月号で「未来に語り継ぎたいレースBEST100」の巻頭特集が組まれた。23年9月号では「今昔名バイプレーヤーBEST100」という企画もあった。「昭和100年」とは直接関係はない企画だったが、読者投票数も予想以上に多く、同誌での過去の名馬、名勝負を振り返る企画は人気が高いと聞く。投票結果も、読者投票というとどうしても新しい馬、レースに票が集まるのが常だが、名馬では3位にオグリキャップが入り、シンボリルドルフ、メジロマックイーン、ライスシャワー、テンポイント、シンザンも上位に名を連ねた。名レースの1~3位は平成ではあるが1990年代で占め、テンポイントとトウショウボーイがマッチレースを演じた昭和の名レース・1977年有馬記念も15位となった。
 優駿誌での「名馬」は「日本の競走馬」という括りがあった。これはJRAの「競馬の殿堂」(顕彰馬)も同様だが、そのため日本競馬の発展に大きく寄与した輸入種牡馬や繁殖牝馬は選定の対象外となっている。だがライジングフレーム、ヒンドスタン、テスコボーイ、パーソロン、ネヴァービート、ノーザンテースト、そしてサンデーサイレンスが「もしも」輸入されていなかったら、現在の日本競馬の質はまったく違うものになっていたはずだ。どうしても現在隆盛を極めているサンデーサイレンス系ばかりに目が向きがちだが、サンデーサイレンスを日本に輸入することができたのは、ノーザンテーストによって社台グループがしっかりとした地盤を固めていたからこそだった。吉田善哉氏は「ノーザンテーストの成功がなかったら、社台ファームはもう潰れていた」と生前によく話されていた。
 同様に、ライジングフレーム、ヒンドスタンは日本競馬が急激に売り上げを増やした昭和30~40年代を支えた種牡馬だったし、テスコボーイやネヴァービートは馬産地・日高の土台を築いた。パーソロンは千葉、栃木などの馬産を支えシンボリ牧場、那須野牧場、メジロ牧場という大牧場の屋台骨となった。いまや日本の馬産にとってなくてはならない存在になっているセレクトセールが誕生したきっかけは「サンデーサイレンス産駒を馬主の誰もが公平に入手できるように」という思いが大きな要因だったし、日高の北海道市場は日高軽種馬農協所有だったテスコボーイ、トウショウボーイの産駒の高額取引があったからこそ、いまに繋がっている部分もある。地方競馬に目を向ければ、チャイナロック、ファラモンド、テューダーペリオッド、アラナス、ネプテューヌスなどの種牡馬がダートのパワー競馬の基礎を築いてきた。
 馬産地にとっては種牡馬以上に繁殖牝馬の影響力は大きなもので、古くは小岩井農場が輸入したビューチフルドリーマー、フロリースカップ、アストニシメントなど、下総御料牧場が輸入した種正、星旗、星若、星友などをはじめ、現代なら一大牝系を築きつつあるウインドインハーヘアなどの輸入繁殖牝馬もいる。JRAの殿堂入りは果たしていないシラオキ、クインナルビー、スターロッチ、現代ならダイナカール、シーザリオなどの日本産の名牝、名繁殖牝馬もいる。
 日本競馬を支えてきた名種牡馬、名繁殖牝馬の功績を称える施設として、新ひだか町静内には「桜舞馬公園(オーマイホースパーク)」があり、テスコボーイの銅像をはじめ、サクラショウリ、サクラチヨノオー、テンモンなどの名馬、タマナー、ファバージ、ノーザリー、ホープフリーオンなど種牡馬の石碑が建立されている。だがこれはほぼ静内地区に縁のあった馬に限定した施設となっている。
 「昭和100年」を機に、ジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)、日本軽種馬協会、日高・胆振軽種馬農協、日本競走馬協会などが協力し、馬産地の名伯楽らを委員に迎えて委員会を設置し、「日本の馬産を支えた名種牡馬、名繁殖牝馬」を称えるイベントや『優駿』のような「ベスト100」のピックアップ、ウェブサイト作成などを実施してはどうだろうか。それがJAIRSが取り組んでいる功労馬繋養支援事業の更なる盛り上がりにも繋がっていくように思える。

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