2026年8月25日
既知の魅力と未知の魅力
今年のセレクトセールも無事に終了した。2日間で509頭が上場され478頭が落札。総売り上げは334億8400万円に達し、昨年の327億円を約2.4%上回って歴代最高を更新した。1億円以上の高額落札馬は1歳45頭、当歳39頭、2日間合計で84頭だった。当歳セッションの売り上げこそ昨年から約7.8%減少したものの、全体を通して考えれば今年も凄まじい結果になったと言える。この2日間のセールを見て個人的に改めて感じたのは、サラブレッドセールには「既知の魅力」と「未知の魅力」のどちらもがほぼ等しく必要なのだな、ということだった。
まずは既知の魅力。すでに実績を残している種牡馬の産駒が高く評価されるのは当然のことで、セレクトセール自体、種牡馬成績が極めて優秀で庭先取引ではなかなか手に入れることができなかったサンデーサイレンス産駒を、平等に購買できる機会を提供する目的もあって設立された経緯がある。それが次にディープインパクト産駒に移り変わった。現在は、イクイノックス、クロワデュノールと立て続けに大物産駒を送り出したキタサンブラック、24年と昨年の2年連続でJRAリーディングサイアーとなり今年も7月末時点でトップのキズナ、産駒デビューから8年目で7頭のJRA・G1勝ち馬を輩出しているエピファネイアの3頭のトップ種牡馬が安定した人気の高さを誇っている。
それぞれの種牡馬別取引成績(落札頭数と平均価格)は、キタサンブラックが1歳14頭・約1億6057万円、当歳18頭・1億3500万円。キズナは1歳13頭・約7723万円、当歳10頭・1億4020万円、エピファネイアは1歳13頭・約1億1085万円、当歳12頭・約5692万円。キズナ、エピファネイアもコンスタントに一流馬を輩出しているが、キタサンブラックは将来の種牡馬入りが狙える超一流牡馬を送っている点で、「夢」という魅力がさらに購買者層に刺さっているのかもしれない。
未知の魅力の代表格はやはりイクイノックスで1歳13頭・約1億5262万円、当歳15頭・約1億4553万円。世界最大の競馬メディア・サラブレッドデイリーニュースも「産駒がまだ一度もレースに出走していない種牡馬としては、驚異的な数字と言える」とセール後に報道していた。昨年は当歳23頭・1億5500万円で評価はほぼ変わっていない。1年目に比べると新鮮味がやや薄れる2年目は取引価格が落ち着くことが多いが、イクイノックスにはそのような傾向は見られず、高値は来年も続くだろう。ドウデュースの初年度産駒9頭は当歳セッションですべて落札され、価格約7856万円。当歳が5頭以上取引された種牡馬の中ではイクイノックス、キズナ、キタサンブラックに次ぐ価格となった。新種牡馬としては23年のコントレイル(1億2860万円)には及ばなかったが、24年のエフフォーリア(約6383万円)を超えた。
未知の魅力は絶大ながら、まだ評価が定まっていなかったのはオーギュストロダンだろうか。当歳セッションに初年度産駒3頭が上場されたが、2頭が主取。1頭が8800万円だった。だが取引成立した「レイクイラワラの2026」(牡)を上場した岡田スタッドの岡田牧雄代表は「オーギュストロダンはディープインパクトの種牡馬の中では一番だと思っており、受胎をした牝馬がいないかと思い、いろいろと探していた」と同馬が自信の上場馬だったと語っていた。オーギュストロダンを種牡馬として導入することも検討したことがあるという。オーギュストロダンの種付け料は欧州では2万7500ユーロ(約500万円)、シャトル先のニュージーランドでは30万NZドル(約280万円)とリーズナブルな設定になっている。その競走実績と、ディープインパクト最後の世代の代表産駒という付加価値を考えれば、今後日本に導入されセレクトセールの主役を張る種牡馬の一頭になる可能性も十分にありそうだ。
未知と既知の魅力がバランス良く融合されたのがエフフォーリアだったのだろう。1歳は10頭・1億5040万円、当歳は5頭・7700万円で、価格はともに父エピファネイアを超えた。昨年は1歳12頭・5175万円、当歳7頭・5400万円と未知の魅力も大きかったが、今年は初年度産駒の2歳がセール時点で19頭デビュー(すべてJRA)し、いずれも新馬戦で6勝、2着3回、3着4回という新種牡馬としてロケットスタートを決めた。いずれも芝レースで、勝った6頭のレース内容も素晴らしかったし、3着内率は68.4%の高さとなった。エフフォーリア自身が2歳8月のデビューから皐月賞まで4連勝。父エピファネイアも2歳時は無傷で3連勝していることから、産駒が早熟タイプであるとも考えられるが、成長力の不安よりも産駒デビューからの1カ月間があまりにも衝撃的だったことが期待度を膨らませているのだろう。
一方で、これまで未知の魅力により高額落札が続いていたコントレイルは、3歳の初年度産駒が意外に仕上げに手間取った点が価格に反映。1歳14頭・約6986万円(昨年は11頭・約1億4218万円)、当歳12頭・約5883万円(同17頭・約9147万円)と落ち着いた価格になった。今後どのような既知の魅力を加えていくことができるのか、来年のセレクトセールまで産駒の動向に注目していきたい。